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「ギャラクティカ・マグナム」    【作:ゲコ】

          リングにかけろ

1) Prolog 6

 2003年秋に大阪で行われた世界柔道選手権大会。
 5対5で戦う団体戦において、日本チームは決勝戦に進み、惜し
くもフランスに2対3で敗れましたが、大将戦で自分の1.5倍も
重い選手を投げて一本勝ちした井上康成選手の活躍には、同じ日本
人として大変感動しました。

 同じく2003年の、7月。英国・グラスゴーで開催された世界
剣道選手権大会。この大会も5対5の団体戦で、日本チームは見事
優勝。決勝の最終戦で韓国チームの大将に一本勝ちして優勝を決め
た栄花選手の活躍も見事でした。
 どちらの大会でも、優勝したチームにも負けた試合や引き分けた
試合があり、5対5の団体戦において全試合に全員が勝つというの
は、よほど難しいことに思われます。

 ところが今を溯ること25年前、これを成し遂げたチームがあり
ました。

 1979年のボクシング・ジュニア世界選手権大会。

 5対5の団体戦で、日本チームは1回戦から決勝戦まで5人全員
が全試合に勝利するという「完全勝利」を達成したのです。

 ただし、これはフィクションの中での事です。

 車田正美・作のコミック「リングにかけろ」のストーリーにおけ
る、クライマックス・シーンが上記の「完全勝利」でした。

 今回はこの「リングにかけろ」を取り上げ、この作品のストーリ
ーが意味するものと、日本の技術者の未来について考察したいと思
います。


2) 「リングにかけろ」の解説

 「リングにかけろ」は1970年代〜80年代の代表的コミック
の一つで、その斬新な構図、例えば見開き2ページのフィニッシュ・
ブローや、パンチを受けた選手が屋内会場から外へ飛ばされるシー
ンなどには、大変興奮しました。

 最近ヒットしたハリウッド映画「マトリックス」のアクション・
シーンも、当時の日本製コミックの影響を少なからず受けていると
思われます。

 この作品のストーリーの概略を紹介します。

 故郷の山口県から姉の菊とともに上京した主人公・高嶺竜児は、
中学校のボクシング部において頭角を表し東京都の大会に出場する。
その大会で生涯最大のライバル・剣崎順と決勝で対戦し、敗れるも
のの、剣崎の負傷欠場によって全国大会に出場し、強力なライバル
たちに勝って優勝する。この大会はボクシング・ジュニア世界選手
権大会の予選も兼ねており、ベスト4に残った高嶺、河井武士、支
那虎一城、香取石松に剣崎順を加えた5人が代表選手に選ばれる。

 世界選手権大会では、その日本代表チームが各国の代表チームを
連覇し、決勝戦でギリシャ・チームを破って「完全勝利」を成し遂
げる。

 世界大会では通常のパンチに加え、「ジェット・アッパー」や
「ブーメラン・スクエア」といった信じられない程の破壊力を持つ
フィニッシュ・ブローが飛び交い、ボクシングというよりアクショ
ン漫画に近い展開を見せます。

 その後の物語は、高嶺竜児がボクシング世界チャンピオンになる
まで続くのですが、長くなるので省略します。


3) 「ギャラクティカ・マグナム」の解説

 前節の世界大会において、主将は日本大会で優勝した高嶺竜児で
したが、実力的に主将格は剣崎順と思われます。

 この剣崎が編み出した必殺パンチが、ボクシングの常識を超越し
たスーパー・ブロー「ギャラクティカ・マグナム」(略称GM)で
す。
 このパンチが打たれた時、リング上の空気はプラズマ状態となっ
て辺りに炎が燃え上がり、パンチを受けた相手はリングのロープを
引きちぎって武道館(=大会会場)の外まで飛ばされるという、恐
るべきパンチでした。

 20年後「リングにかけろ2」において、「“ギャラクティカ・
マグナム”はすでに解明されている」とされ、ドイツのエミーナの
説明によると、
「パンチの圧力によって空気中の静電気から電子スピンを発生させ、
それをコントロールし、プラズマスパイラルとして相手を直撃する
と、一千億の星々を飲み込む銀河の奔流の如くなる」
ということらしい。

 さらにドイツのヘルガ・Jrは、剣崎の息子・麟堂の言葉からヒ
ントを得てこれを補足し、
「(GMの威力を表す)数式中の未知のデータに、高電圧V1の値
を代入し、発生するエネルギーの値をe電子ボルトと置いて、光速
の定数Cを乗ずれば、GMの最大値は...インフィニット(無限
大)!!」
と驚愕しています。

 自分なりに解釈するに、GMは、
「空気中の静電気を高速のパンチによる電磁誘導で飛躍的に増大さ
せ、その巨大な電気エネルギーを再び運動エネルギーに変換してパ
ンチの威力に上乗せし、相手にぶつける。変換しきれなかった電気
エネルギーは熱となって周辺の空気をプラズマ化し、大量の炎が発
生する」
というようなイメージだろうか。

 この最新の科学技術をもってしても実現困難と思えるメカニズム
を、生身の体でやってのけた剣崎は、やはり天才というほかない。


4)「リングにかけろ」の技術史的解釈1

「リングにかけろ」はまったく架空の話でしょうか。
 ここに日本が辿った産業技術史との奇妙な一致を見ることができ
ます。1970年代〜80年代、日本はスポーツでは世界と比較し
て特に強かったわけではないものの、技術開発と経済競争では連戦
連勝であり、世界市場を席捲していました。
 つまり、「リングにかけろ」に登場する5人の代表チームボクサ
ーは、日本の技術者を表現したものではないかと思います。世界大
会で日本は欧米のチームに連勝して優勝しましたが、これは欧米と
の技術競争に勝ち、世界市場を制覇したことを表しています。

 決勝の相手はギリシャ。なぜ先進国ではないこの国とFinal
で戦ったか。現代文明はさまざまな文明が複合してできているもの
の、主流はギリシャを原点とするヨーロッパ文明です。
 つまりギリシャはヨーロッパ文明の象徴として描かれ、それに勝
つことで、「欧米文明に勝った日本のハイテク技術」が表現された
のです。


5)「リングにかけろ」の技術史的解釈2

 前記世界大会決勝で、ギリシャの副将・テーセウスと、日本の剣
崎が戦った試合を振り返ってみます。

 テーセウスのフィニッシュ・ブロー「ハート・ブレイク・キャノ
ン」と、剣崎のGMが衝突し、キャンバスを引き裂く大爆発が起き
る。そこで両者ともフィニッシュ・ブローが打てない状態となり、
以後両者は普通に打ち合う。一方的にやられる剣崎。

 テーセウスいわく、「普通に打ち合えば、実力は私の方が上だ!」
これは、何を意味するか。
 ボクシングの基本であるパンチと防御で負けていながら、強力な
フィニッシュ・ブローで相手を倒して勝ち進んだ日本代表。これは
「基礎理論の分野では常に欧米に負けていながら、最後の製品化の
段階で薄氷の勝利を収め、経済競争に勝ってきた」日本そのものの
姿に見える。
 この後テーセウスとの戦いも、剣崎はもうひとつのフィニッシュ
・ブロー「ギャラクティカ・ファントム」によって、逆転勝利を収
めた。

 では、GMに代表されるフィニッシュ・ブローの意味するものは
何であろうか。それは、技術開発・製品開発における「ブレイク・
スルー」ではないだろうか。

 具体的な例を上げてみます。

 1993年、四国・徳島の中小企業であった日亜化学工業におい
て、当時同社の研究員だった中村修二博士(現・米国カリフォルニ
ア大学サンタバーバラ校=UCSB 教授)は、「20世紀中の実
現は不可能」とされていた「青色発光ダイオード(LED)」の開
発に成功しました。

 剣崎順がGMを放っている見開き2ページの絵において、剣崎を
中村博士に置き換え、「ギャラクティカ・マグナム」を「青色発光
ダイオード」では言いにくいので、「ライトニング・ブルー」と言
い換えて、背景の炎を青色に変えてみましょう。この絵は、中村博
士が「青色LED」の開発に成功した図式を、イメージで表現して
いると言えないでしょうか。
 そしてGM =「ライトニング・ブルー」で会場の外に飛ばされた
敵とは、「実現不可能と言っていた世間の認識」ではないでしょう
か。中村博士はその「ブレイク・スルー」によって、世間の固定観
念を、「凡人の常識という会場」から外へ吹き飛ばしたのです。
 博士はその後会社を辞め、現在はUCSBで研究を続けています
が、今後どのような発明がされるか楽しみです。それは「ギャラク
ティカ・ファントム」となって、再び世界を震撼させるでしょうか。


6)「リングにかけろ」の技術史的解釈3

 中村博士の他にも、当時の日本には天才的な技術者が何人もいま
した。彼らの起こした「ブレイク・スルー」が原動力となって、日
本は技術競争に打ち勝ち、経済大国となったのです。
(技術者にとってあまり意味のない)年齢や学歴が上なだけの経営
陣が彼らより上位にいたことは、日本のシステム上の欠陥と言えま
す。未来の科学技術立国建設に向けて、日本はシステムの再構築
(リストラクチャー)を強力に進める必要があるかもしれません。

 システムの再構築とともに、全体の底上げも不可欠です。技術者
の集団をピラミッド階層とした場合、天才技術者はごく一握りです。
底辺を広げまた強化することで、頂点も広がりまた高くなるでしょ
う。

 その意味では、「底辺の技術者」を自覚する私のような者にも、
それなりの使命があると考えられます。つまり剣崎クラスの「GM
=ブレイク・スルー」を放てる人は稀でも、底辺から頂点までの人
がそれぞれのレベルで「GM=ブレイク・スルー」を達成できれば、
全体として強力な技術者集団が出来上がることでしょう。

 もちろん頂点と底辺を(報酬等の点で)等列に評価する悪平等は、
未来に向けて排除されなければなりません。
 これは技術の分野に限らず、ビジネスやその他の分野においても、
目標を持って仕事に取り組み、成功した時のイメージを「ギャラク
ティカ・マグナム」で表現できます。
 この国の未来は、いろいろな分野の人が、それぞれのレベルで
「GM=ブレイク・スルー」を達成することで、築かれていくのか
も知れません。

 みなさんも明日から、仕事や趣味において成功した時、それぞれ
の情景を描きつつ、心の中で叫んでみましょう。

「ギャラクティカ・マグナム!!」


7)Epilog 6

 身近なエピソードや作品を通じて自分の専門分野を紹介するこの
コラム、今回は名作コミック「リングにかけろ」の登場人物(ボク
サー)と、日本の技術者との共通点から、日本の明るい未来につい
て考えてみました。

 また、中村修二博士 = 剣崎順 との仮説から、「ギャラクティ
カ・マグナム」の意味についても考察しました。

 このように考えれば、それぞれの仕事の分野で自分が世界と競っ
ているのだと思えて、スポーツ選手に過剰な期待をかけなくてもよ
くなるかも、と思えます。

 それでは、また次回お会いしましょう。


8)本コラムの参考文献

  屮螢鵐阿砲けろ」 車田正美・作 集英社
◆ 屮螢鵐阿砲けろ2」 車田正美・作 集英社
 「怒りのブレイクスルー」 中村修二・著 集英社


                        以上
| 二足のわらじ | 20:59 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |

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Comment
こ、これがギャラクティカマグナムの正体だったのですか!?
ジョークとして書かれていると思うのですが、出所のきちんとした情報を裏づけとして、論旨が成り立った(?)文章に、ついつい引き込まれてしまいました。
これには私がリングにかけろを結構好きだったことと、技術者(ソフトウェア関係)であることも関係しているのかもしれません。
他の作品も期待しています。
それでは。

#それにしても、2004年とだいぶ前のドキュメントですが、不思議とコメントがないんですね。。
2008/07/23 7:08 AM, from ささっと
”ささっと”様
「二足のわらじ/ギャラクティカ・マグナム」を読んでくださり、ありがとうございました。本連載コラムは「科学技術の面白さを自分の言葉で不特定の人に伝えたい」という動機で書き始めたもので、そのためのツールとして”お笑い”を使いたいと思い、メルマガGAGに参加しています。お読み頂けると大変励みになりますので、今後もよろしくお願いいたします。
2008/09/26 1:55 PM, from









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